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就労支援の現場から生まれるイノベーションと英知が集まる日本障がい者就労支援学会シンポジウム2022.04.04#お知らせ

日本障がい者就労支援学会シンポジウムには、全国各地にある障がい者就労支援の現場から多くの事例、ノウハウが集まっています。イノベーションは、現場から生まれます。現場の声を集約することは、社会福祉業界全体にとっても極めて有意義な活動になっていくでしょう。本稿では、3月10日(木)に行われた第2回 日本障がい者就労支援学会シンポジウムについてレポートします。

 

就労支援の現場から集まる障がい者就労の現状

「すべての人に健康と福祉を」

 

これは、SDGsのなかで掲げられているグローバル目標のひとつです。日本障がい者就労支援学会は、この目標に真摯に向き合い、達成に向けた活動を続けています。

 

3月10日(木)に、第2回 日本障がい者就労支援学会シンポジウムが開催されました。テーマは、前回に引き続き「SDGs実現に向けて、私たちが取り組むべき就労支援 ~就労支援の現場から生まれるイノベーション~」。第1部では就労支援の現場から、より具体的な、より実践的な活動報告発表が行われました。

 

活動報告のアジェンダ

・一般就労の成功事例

・支援の課題事例

・自社独自の取組事例

 

活動報告の内容(一部、テーマのみ抜粋)

・無意識の過剰支援

・本人と親の一般就労への考え方の相違

・施設外就労での課題

・個別支援を行っていく難しさ

・指導員のメンバーに対する対応

・一般就労への意欲向上

・高次脳機能障害のある利用者への支援

・障害特性に考慮した就労支援方法

・障がい者を障がい者じゃなくするプロジェクト

・関係機関との顔のみえる関係づくり

・B型事業所からA形事業所、そして一般就労へ

・休憩時間の過ごし方

 

いずれも興味深い発表テーマで、これほどの現場の声が集まる機会は貴重でしょう。就労支援に携わっている方、これから携わりたいと考えている方、障がい者福祉事業に関心のある方、社会貢献したい方、障がい者の方々に就労機会を提供したい方…すべての方々にぜひ聞いていただきたい内容です。

 

福祉施設で行われる虐待の現状と対策

続く第2部では、坂井裕紀教授に基調講演をしていただきました。

 

坂井裕紀教授プロフィール

武蔵野学院大学 国際コミュニケーション学部教授

EdTech研究所 所長

京都工芸繊維大学 非常勤講師

産業カウンセラー・心理相談員

 

基調講演の前半では、

 

・障がい者福祉施設における虐待の状況

・虐待の相談・通報・判断件数の推移

・虐待の種類と程度

・虐待の防止と原因

 

という、社会福祉事業者が必ず取り組まなければならない内容について、2018年に厚生労働省が発表した調査結果をもとに解説していただきました。

 

障がい者福祉施設で発生している虐待の種類と割合は、身体的虐待が51.7%、性的虐待が13.3%、心理的虐待が42.6%。さらに、放棄・放置、経済的虐待があると言います。身体的虐待のうち10.1%が、生命・身体・生活に関する重大な危険に相当する行為で、看過できない問題です。

 

虐待防止の対策として、職員及び管理対象者の虐待防止研修の実施(87.3%)、通報義務の履行(40.7%)が挙げられ、虐待の原因としては教育・知識・介護技術などによる問題(73.1%)、職員のストレスや感情コントロールの問題(57.0%)、倫理観や理念の欠如(52.8%)とされます。

 

2021年9月に発行された『いじめ防止の3R:すべての子どもへのいじめの予防と対処(ロリ・アーンスパーガー 著、奥田健次 冬崎友理 翻訳 学苑社)』によると、いじめ対策で重要なことは、「認識すること(Recognize)」「対応すること(Respond)」「報告すること(Report)」という3Rであると言います。いじめに関して書かれた書籍ですが、障がい者福祉施設で発生している虐待に対しても応用できる内容でしょう。福祉施設で働いている方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

 

ゲーミフィケーションで職員・スタッフが働きやすい環境を

基調講演の後半では、ゲーミフィケーションについて教えていただきました。ゲーミフィケーションとは、学習活動や職業生活に「ゲーム要素」を取り入れた活動のこと。仕事をゲーム化することで、ポジティブ感情が増加し、

 

・ネガティブ感情によって高められた嫌な気分や心拍率、

血圧などの自律神経系の亢進を素早く元に戻す

・行動のレパートリーを広げ、さまざまな対処行動を可能にする

・免疫力を高め、がん再発のリスクを減少させる

 

などの効果が得られるそうです。

 

さらに、仕事をゲーム化する方法や仕事に活用できるゲーム要素、ゲーミフィケーションのフレームについても解説していただきました。

 

ゲーミフィケーションのフレームは、

 

・課題(ミッション)

・目標(ゴール)

・規則(ルール)

 

で構成され、とてもシンプルで現場でも導入しやすいでしょう。

 

フレームの例として、

 

課題(ミッション):運動不足による体脂肪の増加

目標(ゴール):6ヶ月後に体脂肪を5%減少させる

規則(ルール):自宅最寄り駅のひとつ手前で降りて、スキップで帰宅する

 

などが挙げられました。仕事だけでなく、プライベートでも応用できるフレームですね。

 

ゲーム要素は、実は生活のあらゆるところで組み込まれています。例えば、応用行動分析学には「トークン・エコノミー法(トークン・エコノミー・システム)」という言葉があります。

 

・増やしたい行動

・出現させたい行動

・減らしたい行動

・止めさせたい行動

 

などの目標となる行動を増やす(強化する)ための報酬などの刺激(強化子)に、数を貯めると実際の報酬と交換できるトークン(引換券)を用いる技法がトークン・エコノミー法(トークン・エコノミー・システム)です。

 

この技法は、障がい児の療育や不登校児への対応だけでなく、私たちの生活シーンでも組み込まれています。マーケティング手法として、ポイントカードやスタンプカードなどとしても用いられる技法です。単純に値引きするよりも、ポイントカードやスタンプカードなどのトークン(引換券)を用いる方がリピーターを獲得しやすいわけです。

 

ゲーミフィケーションを福祉の現場にうまく取り入れることで、職員・スタッフの方々の健康やモチベーションアップにつなげることができるでしょう。どんなときも、遊び心を忘れてはいけませんね。

 

第3回以降の日本障がい者就労支援学会シンポジウムの開催予定は、後援している当サイトで発表しますので、ぜひご参加ください。

 

また、一般社団法人日本福祉事業者協会の協会員になれば、過去のシンポジウムの動画閲覧や、各種勉強会に参加することもできます。現在、社会福祉事業を営んでいるオーナー・経営者の方々や職員・スタッフの方々だけでなく、これから社会福祉事業をスタートしたい法人・個人の方も歓迎しています。

 



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