【レポート】11月特別開催「その業務委託大丈夫?契約のリスクを回避する『就労施設のための契約の知識講座』」2023.01.19#新着情報
就労継続支援A型事業所などの就労施設は、利用者が行う業務を外部から受託する形で成り立っております。
その際に必ず業務委託契約を結び、それに伴い業務委託契約書を作成しますが、
・知人の業者だったため、思わず口頭で契約を結んでしまった
・契約書にはテンプレートをそのまま使用しているが、内容に不備はないのだろうか
・そもそも契約についてあまりよく理解していない
など、様々な不安や疑問を抱える事業者が非常に多いと思います。
そこで今回のセミナーでは契約書の専門家である弁護士法人ほくと総合法律事務所 藪田崇之弁護士をお招きし、
就労施設における業務委託契約について、重要なポイントを伺いました。
契約書を作成していないため起こるトラブル
就労継続支援ではどういった業務を行うのか。事前に実施したアンケートを元に、声の多かったものの中で起き得るトラブルについて、
また、トラブルが起きた際に契約書がないとどのようなリスクが考えられるのかを紹介しました。
例えば、
〇清掃業務中に委託先の備品が壊れてしまった。
契約書を作成していないと、
・壊れた理由にかかわらず弁償させられるリスクが発生。さらに、壊れた備品が高価な場合は、賠償金を支払わなければならない可能性がある。
〇物販委託契約で仕入れ商品に不良品があった。
契約書を作成していないと、
・不良品の処理を頼まれ、不要な費用がかかるリスクが発生。また、その処理にかかった費用を委託先に請求しても、支払いを拒否される可能性がある。
上記以外にも、契約書を作成していないために起きる様々なトラブルが考えられます。
しかし、契約内容を書類として残しておくことで、契約内容が明確になり、これらのトラブルを未然に防ぐことができます。
また、訴訟が起きた際の有力な証拠になると同時に、契約内容が初めから明らかになっているため訴訟のリスク自体が下がると藪田弁護士はいいます。
契約に関する知識をつける
契約書を作成するメリットを理解したところで、書類を作成しようにも
では、
・どういった契約書を作成すればよいのか
・契約内容のどの部分に注目すればよいのか
・取引相手が契約について理解に乏しい場合は
など、まだ不安や疑問が残ると思います。
そこで、契約に関する知識をつけて、契約内容の意味を理解しましょう。
どのような内容が定められているのか分かれば、逆に定められていない内容や、リスクを事前に見つけ出すことができます。
契約に関する知識を持つことで、リスクを回避できる契約書が作成できるのです。
契約の一般条項に関する知識
藪田さんは、ほぼすべての契約書類に書かれているという6つの条項について解説。そして、内容のどういった部分、または文言に注意すべきかのチェックポイントを紹介しました。
これらの条項に関する知識があれば、今後の契約に際して十分な対応が可能になるとのことです。
【6つの条項】
①反社会勢力の排除条項
②秘密保持条項
③契約期間条項・契約期間条項
④契約解除条項
⑤損害賠償請求条項
⑥紛争解決条項
業務委託契約におけるトラブル解消のポイント
次に、就労継続支援で実際に起こりうる契約上のトラブルを事例に挙げ、その対応・対策を解説。
一部紹介すると、最初に例に挙げた清掃中に備品を壊してしまった事例について
・損害賠償請求条項の賠償範囲や責任上限額を設定する。その際、備品が壊れると想定して契約条項を設定すること。例えば、壊れた原因が経年劣化か、従業員の過失かで対応・対策も変わる。
この他にも、様々な事例について解説していただきました。
【事例一覧】
①清掃中備品を壊してしまったときの責任や賠償の範囲がわからない
②清掃のクオリティはどこまで求められるのか
③業務委託金を口頭で約束したら支払時にトラブルになった
④商品を運ぶときに壊してしまい買取請求されてしまった
⑤預かった商品数と納品数が合わないがどう処理すればいいのか
⑥依頼された動画作成の内容を外部に漏らしてしまわないか
⑦YouTube動画の編集業務を受託する際気を付けることは?
⑧草刈り作業の依頼があったがどのような契約を結べばよいか
まとめ
1時間40分に渡る講義のうち、藪田弁護士による解説がほとんどを占める非常に内容の濃かった今回のセミナー。
最後に、司会を務めた当協会奈良理事は本日のまとめとして
「仕事を進めていく上でトラブルは起き得る。契約書にあらかじめ内容を落とし込んでおくことは、仕事をスムーズに進めていくために重要」
「また、起こり得る事象を想定するのも大切。考えることにより業務内容がより具体的に見えてくる。自分の中で整理でき、お相手にも(契約、業務内容について)説明がしやすくなる」
「漠然と業務委託契約するよりも知識を前提とするほうがはるかに良い。ぜひ今回の内容を活かしていただければと思います」と話しました。
セミナーを終え、参加者からは
“施設外就労ではどんな不測の事態が起こるかわからないため、メンバーさんやスタッフ、会社を守り、取引先とも良好な関係を維持するためにもきちんとした契約書を作成することが重要なことがわかりました。”
“草刈りなどのお仕事の時の契約の内容に、 確かにそうだなぁと納得できました!”
などの感想をいただきました。
「就労施設における業務委託契約」について、現時点ではその情報を確認することができません。
当協会でも初めて取り上げるテーマでした。
記事では紹介しきれなかった内容の詳細については、ぜひ動画をご視聴いただき、最新の知識として取り込んでいただきたいです。
当協会ではこれからも会員のみなさまに役立つ情報をお伝えしてまいります。
今後とも一般社団法人 日本福祉事業者協会をどうぞよろしくお願いいたします。
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【セミナー内容】
1.オープニング
2.自己紹介
3.就労施設における業務委託契約
(1)藪田崇之さんプロフィール
(2)契約書がないため起こるトラブルについて
(3)契約とはなにか?
(4)契約書を作成するメリット/しないデメリット
(5)契約に関する知識があることのメリット/ないことのデメリット
(6)契約の一般条項に関する知識
(7)委託業務契約におけるトラブルの解消ポイント
4.質疑応答
5.事務局からのご案内
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