令和6年度の就労継続支援A型スコアはどこが改定された?各評価項目ごとに解説2025.02.10#新着情報
- 就労継続支援A型の報酬改定で何が変わった?
- スコアをどのように評価すればよい?
- 改定後は何を意識すればよい?
令和6年は、3年に1度のペースで実施される就労継続支援A型スコアに関する評価項目の見直しが行われました。
新しい評価項目が増えたり評価の点数配分が変更されたりしているので、改定後の状況を的確に把握しましょう。
この記事でわかること
- 就労継続支援A型スコアの基本概要
- スコア評価の項目別の内容
- 令和6年度の改定ポイント
就労継続支援A型スコアの基本概要と考え方
就労継続支援A型は、1人の利用者に対して1日サービスしたときに発生する「基本報酬」と、一定要件を満たすと発生する「加算報酬」の2種類で構成されます。
基本報酬の基準は、金額ではなく単位が採用されています。「算定する単位数×1単位の単価」で計算し、単位数を決める基準は以下の3点です。
- 定員区分(20人以下〜81人以上)
- 人員配置区分(7.5:1以上、10:1以上)
- 評価点(60点未満〜170点以上)
3年ごとに評価基準が見直しされており、令和6年度では3つの項目に沿った単位数が改定されました。
今回の改定内容は令和9年(2027年)まで適用される予定です。
ここでは、2段階に分かれる人員配置区分別ごとに令和6年度に改定された最新の単位数について解説します。
就労継続支援A型サービス費Ⅰ
就労継続支援A型サービス費Ⅰは、前年度の平均利用人数に対する、職業指導員と生活支援員の常勤換算した合計人数の割合が、7.5:1以上になる場合が該当します。
170点以上 | 150点以上170点未満 | 130点以上150点未満 | 105点以上130点未満 | 80点以上105点未満 | 60点以上80点未満 | 60点未満 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
20人以下 | 791 | 733 | 701 | 666 | 533 | 419 | 325 |
21人以上40人以下 | 710 | 656 | 626 | 594 | 474 | 373 | 288 |
41人以上60人以下 | 672 | 619 | 590 | 558 | 445 | 350 | 271 |
61人以上80人以下 | 660 | 609 | 580 | 547 | 438 | 344 | 266 |
81人以上 | 641 | 588 | 559 | 529 | 422 | 333 | 258 |
就労継続支援A型を利用する多くの事業所が、就労継続支援A型サービス費Ⅰに該当するように職員を配置しています。
なぜなら、就労継続支援A型サービス費Ⅰのほうが就労継続支援A型サービス費Ⅱよりも、高い報酬額の区分を算定できるようになるからです。
就労継続支援A型サービス費Ⅱ
「就労継続支援A型サービス費Ⅱ」は、前年度の平均利用人数に対する、職業指導員と生活支援員の常勤換算した合計人数の割合が、10:1以上になる場合が該当します。
170点以上 | 150点以上170点未満 | 130点以上150点未満 | 105点以上130点未満 | 80点以上105点未満 | 60点以上80点未満 | 60点未満 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
20人以下 | 727 | 671 | 641 | 608 | 486 | 382 | 296 |
21人以上40人以下 | 655 | 604 | 574 | 543 | 432 | 341 | 264 |
41人以上60人以下 | 613 | 563 | 535 | 505 | 403 | 318 | 246 |
61人以上80人以下 | 602 | 552 | 524 | 495 | 394 | 311 | 241 |
81人以上 | 583 | 534 | 507 | 478 | 381 | 301 | 232 |
就労継続支援A型サービス費Ⅱは、就労継続支援A型サービス費Ⅰよりも報酬額の区分は小さくなりますが、必要となる職員の数が少なく済みます。
各評価項目の具体的な内容
就労継続支援A型の評価点(スコア)は、200点満点で算定します。
評価項目 | 改定前の判定スコア(点) | 現在の判定スコア(点) |
---|---|---|
労働時間 | 5〜80 | 5〜90 |
生産活動 | 5〜40 | −20〜60 |
多様な働き方 | 0〜35 | 0〜15 |
支援力向上 | 0〜35 | 0〜15 |
地域連携活動 | 0〜10 | 0〜10 |
経営改善計画【新規】 | - | −50〜0 |
利用者の知識・能力の向上【新規】 | - | 0〜10 |
評価項目の合計 | 0〜200 | -65〜200 |
改定前の評価項目は全6項目であり、0〜200点の範囲で算定されていました。
令和6年度の改定によって2項目追加されたうえ、いくつかの項目ではマイナス点がつくようになったので、改定ポイントを把握していないと大幅に減点される恐れがあります。
さらに判定スコアの割合も増減があり、評価ポイントを効率よく獲得するためにも判定スコアの内訳の改定も把握しましょう。
労働時間
利用者の労働時間が長くなるほど、利用者の賃金と事業所の支援コストが高くなる傾向にあるため、1日あたりの平均労働時間が評価されます。
1日あたりの平均労働時間 | 改定前の判定スコア(点) | 現在の判定スコア(点) |
---|---|---|
7時間以上 | 80 | 90 |
6時間〜7時間未満 | 70 | 80 |
5時間〜6時間未満 | 55 | 65 |
4時間30分〜5時間未満 | 45 | 55 |
4時間〜4時間30分未満 | 40 | 40 |
3時間〜4時間未満 | 30 | 30 |
2時間〜3時間未満 | 20 | 20 |
2時間未満 | 5 | 5 |
令和6年度の改定では、判定スコアが80点満点から90点満点に変更されました。
なお、一般就労している障がい者が一時的に就労継続支援A型を利用する場合、一般就労分の労働時間は含まれません。
生産活動
生産活動収支は、利用者の賃金水準や雇用の安定性に大きく影響するため、過去3年以内の収支が評価されます。
ここでいう生産活動収支とは、事業収入から生産活動をおこなうために必要な事業経費を差し引いた金額を指します。
過去3年間の生産活動収支の変化 | 改定前の判定スコア(点) | 現在の判定スコア(点) |
---|---|---|
該当各年度で賃金総額を超えた場合 | - | 60 |
前年度、前々年度で賃金総額を超えた場合 | 40 | 50 |
前年度のみ、賃金総額を超えた場合 | 25 | 40 |
前々年度のみ、前々年度の賃金総額を下回った場合 | 20 | 20 |
前年度、前々年度においていずれも各年度の賃金総額を下回った場合 | 5 | -10 |
過去3年間において何も各年度の賃金総額を下回った場合 | - | -20 |
令和6年度の改定では、評価項目が4段階から6段階に増加、そして判定スコアが5〜40点の範囲から−20〜60点の範囲に変更されました。
多様な働き方
社会全体でも働き方の多様化が推進されていますが、利用者の労働環境も例外ではないため、さまざまな人が働きやすい環境が揃っているかが評価されます。
- 免許・資格・検定の受験を推奨
- 利用者を職員として登用
- 在宅勤務や服務規律
- フレックス制度
- 時短勤務
- 時差出勤制度
- 有給休暇
- 傷病休暇
8項目のうち該当するものが「2つ以下で0点」「3・4つで5点」「5つ以上で15点」がそれぞれ加算される仕組みです。
令和6年度の改定では、評価項目が5項目から8項目に増加、そして判定スコアの分配数が最大35点から最大15点に減少しました。
分配割合は減少していますが、利用者が働きやすい環境を整えると労働時間の増加につながるので軽視できない項目といえるでしょう。
支援力向上
利用者を支援する職員によって意欲や能力向上が左右される傾向にあるため、配置する職員の経験値が評価されます。
職員の支援力が高くなれば、さらに多くの利用者が支援を受けられる環境が整うので、支援事業所としての拡大効果も期待できます。
- 研修参加した職員が1名以上いる
- 学研・学会などの発表が1回以上ある
- 視察・実習の実施もしくは受け入れの何かをおこなっている
- 販路拡大の商談会に1回以上参加している
- すべての職員が人事評価制度に基づいて昇給判定する制度を周知している
- ピアサポートを配置している
- 過去3年以内の福祉サービスについて第三者評価の受審・公表している
- 国際標準化規格が定める認証を受けている
8項目のうち該当するものが「2つ以下で0点」「3・4つで5点」「5つ以上で15点」がそれぞれ加算される仕組みです。
令和6年度の改定では、判定スコアの分配数が最大35点から最大15点に減少しました。
分配割合では減少していますが、利用者の支援環境が整えば労働時間や生産活動の増加につながるので軽視できない項目ととらえましょう。
地域連携活動
事業所が地域と連携する動きは、地域住民の雇用拡大、地域事業の経営促進に大きく影響するため、地域との密接度が評価されます。
地域の事業所と連携した商品開発、官公庁との連携した活動があれば報告書として作成し、インターネットもしくはそのほかの方法で公表すると10点が加算されます。
報告書の作成、公表をしなければ加算対象外のため0点が付与されます。
令和6年度の改定において、地域連携活動の項目に変更点はありません。
経営改善計画
経営改善計画は、利用者の雇用安定を保護する目的で令和6年度から新しく評価対象になった項目です。
事業所は、就労継続支援A型のスコア方式を用いて経営改善計画書を作成し、都道府県から提出を求められたときにそれに従います。
期日内に対応すれば0点、期日内に対応できなければペナルティとして-50の減点です。
令和6年度に新しく追加された項目であり、大幅に減点される可能性のある評価項目のため、忘れずに計画書の作成をしなければなりません。
支援事業所にとっては事務作業が増えるので負担になり得ますが、評価を大きく左右するので役割分担を含めて対応できるように整えておきましょう。
利用者の知識・能力の向上
利用者の知識・能力の向上は、一般就労に向けたサポートを目的として令和6年度から新しく評価対象になった項目です。
事業所が支援をおこなった内容を報告書として作成、インターネットもしくはそのほかの方法で公表すると10点が加算されます。
報告書の作成、公表をしなければ加算対象外のため0点が付与されます。
経営改善計画と一緒に令和6年度の改定によって追加された評価項目ですが、減点対象になるわけではありません。
ただし、改定前と改定後の合計点(200点)が変動しないため報告書の作成・公表しなければ合計点を高く維持できなくなります。
新規指定の場合と会計年度の違い
就労継続支援A型のスコアは、毎年4月中に算定・公表する必要があります。
4月1日〜3月31日が基準となりますが、申請したタイミングによっては1年間のスコアを算定できないケースもでてくるでしょう。
ここでは、新規指定を受けたケースと会計年度が異なるケースについて解説します。
新規指定を受けた就労継続支援A型事業所
新規指定を受けた事業所の場合、初年度は、スコア算出できないため公表する必要はなく、代わりに基本報酬をみなし算定します。
- 新規指定:初年度は80点以上105点未満の評価点を算定する
- 年度途中の指定:初年度と2年度目は80点以上105点未満の評価点を算定する
スコア方式の評価は7段階に区分されますが、新規指定を受けてみなし算定になる場合は、下から3つ目の評価基準が適用されます。
みなし算定となるため、評価項目に対する単位計算は不要ですが、105点以上のスコアを受けられない点を理解しておかなければなりません。
会計年度の終了日が通常とは異なる就労継続支援A型事業所
本来の会計年度の終了日は3月31日ですが、年度当初に指定された事業所は会計年度の終了日が3月31日にならないケースがあります。
その場合、適切なスコア算定できないため、みなし算定になる可能性があります。
- 80〜105点未満の評価点を算定する
- 直前の会計年度を評価する
- 便宜的に前年度の実績で評価する
- 便宜的に前年度と前々年度の2年間の実績で評価する
- 前年度と前々年度の2年間の実績で評価する
会計年度の終了日は「4月〜翌年3月」「4月〜翌年3月以外で指定月以降の始期」「4月〜翌年3月以外で指定月以前の始月」に区分されます。
なお、5番目の「前年度と前々年度の2年間の実績で評価する」は通常通りの評価です。
3つの区分と年度に応じて、みなし計算をするか通常の評価にするか決まります。
会計年度の終了日 | 初年度 | 2年度目 | 3年度目 | 4年度目 | 5年度目 |
---|---|---|---|---|---|
4月〜翌年3月 | 1 | 1 | 2 | 5 | 5 |
4月〜翌年3月以外で指定月以降の始期 | 1 | 1 | 2 | 5 | 5 |
4月〜翌年3月以外で指定月以前の始月 | 1 | 1 | 2 | 5 | 5 |
表を見てわかるとおり、例外的な算定になるのは初年度〜3年度の範囲です。
令和6年度報酬改定と横断的改定事項
3年ごとの見直しで就労継続支援A型に改定事項が多くありますが、スコア方式の評価を間違えないためにも、横断的に変わった点を把握する必要があります。
ここでは、就労系障害福祉サービスにおける5つの改定について解説します。
一時利用の評価方法
一般就労している障がい者が、一時的に就労継続支援A型を利用する場合、支援事業所での労働時間と報酬のみをスコアに算定します。
一般就労している障がい者が支援事業所に来たとしても、一般就労分の労働時間と工賃は算定対象になりません。
休職期間中の利用対応
一般就労している障害者が休職期間中に就労継続支援A型を利用する場合、支給申請をするときに雇用先や主治医からの意見書を提出する必要があります。
意見書の提出と同時に、一般就労で雇用されている企業・医療機関からの復職支援が十分に受けられないときの利用条件、復職支援として活用する生活介護と自立訓練の利用条件を事務連絡で周知します。
実績報告書の提出義務の廃止を見直す
事業所は施設外就労に関する実績を書面で提出する必要がありましたが、地方公共団体の事務負担を軽減する目的で提出が不要になりました。
ただし、毎月の提出が不要になっただけであり、事業所は継続的に施設外就労に関する実績記録の書面の作成・保存をおこなわなければなりません。
地方公共団体から提出を求められたときには、それに従います。
基礎研修開始に伴う対応
就労支援員・就労定着支援員は、過去に職場実習の斡旋・就労支援等の経験者が望ましいとされていたものの、令和6年度の改訂によって基礎的研修の受講が必須になりました。
基礎的研修が開始されるのは令和7年度からであり、令和9年までは経過措置として、基礎的研修を受講していない人でも指定基準を満たしているとみなされます。
令和9年までは時間的に余裕があるとはいえ、基準を満たした人員を確保するためにも早めに基礎的研修を受ける準備を始めたほうがよいでしょう。
事務処理の簡素化
施設外支援は1週間ごとに、当該個別支援計画の内容の見直しが必要とされていましたが、改定によってその期間が1ヶ月ごとに変更されました。
見直しのタイミングでは、就労能力によって賃金の増額、一般就労移行の可能性を評価します。
令和6年度には、3年ごとの就労継続支援A型の見直し・改定が行われました。
特に大きく変化したポイントは、評価項目のうち労働時間と生産活動の2項目の割合が増えた点、いくつかの項目でマイナスがつくようになった点です。
これにより改定ポイントを適切に把握していなければ評価が急激に落ちてしまう恐れがあり、事業所は気をつけなければなりません。
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就労継続支援A型に関する不明点・疑問点があれば、お気軽にご相談ください。