「就労Aの仕事受注の誤解」【始めよう!ソーシャルワークシェアリング】 vol.12022.08.24#新着情報
本協会では、2021年5月に神奈川県川崎市多摩区にて開業した「ほまれの家登戸店(ほまれの家グループ、運営:Future WINGS株式会社)」、2022年4月に神奈川県相模原市にて開業した「インフィニピー小田急相模原(ほまれの家グループ、運営:インクルクー株式会社)」それぞれのオーナーであり、本協会の理事でもある奈良有樹と今野洋の実体験をもとにした≪就労継続支援A型事業立ち上げ実践会》を開催しています。本稿では、実践会の様子を振り返りながら、就労継続支援A型事業所の開業、およびソーシャルワークシェアリングという新しい社会概念の普及までの道のりを連載でご紹介していきます。初回のテーマは、「仕事受注の誤解」です。
就労継続支援A型事業に必要なリソース
就労継続支援A型事業所の開業にあたり必要なリソースは、主に以下の4つです。
・人材(メンバー、利用者)
・物件
・メンバーにやってもらう仕事
・開業資金、運転資金
人材の募集、物件の確保、仕事の受注、資金調達、それぞれにハードルがありますが、経営者・オーナーとしてもっとも心配なのは仕事の受注でしょう。
理事の今野は、「経営者とのつながり」があり、「それなりの営業力」があり、「FC本部の頼もしさ」があるため、仕事の受注もうまくいくだろうと当初は考えていたそうです。
人間関係から仕事を探す
今野は、開業の前に「就労継続支援A型事業をすでに経営している人たちは、どんな仕事をしているのか?」を調べました。
検品や発送作業、クリーニング作業などのいわゆる「内職系の仕事」が多いことに気づきます。そして前職の業務を思い起こしてみると、「定期的なDM発送作業がある」「定型的で、かつ定量な仕事」と気づきます。
そこで、電話で担当者に相談して先方の経営者とオンラインで打ち合わせ。「前向きに検討しますね」という言葉をもらいますが、どこか“ふわっと”していて、話が前に進みません。
そして、その状況をFC本部に相談しました。
すると、「その方との人間関係は、5段階でいうとどれくらいですか?」というFC本部からの質問が。
直接話したのは初めてで、正直面識もない。
「人間関係がないと仕事は受注できません」
「指定申請の関係もあるので、融通が利く人。それくらいの人間関係がある人が理想」
「5段階で5の人を探して、アプローチすることが重要です」
そうアドバイスされ、発想を大きく転換しました。
今野は、
「メンバーさんにやってもらう仕事を取ってくればいいのね」
という誤解があった、といいます。
仕事を受注するということは、人間関係、信頼関係が前提。
「こんな仕事ないかな?」と仕事を探すのではなく、すでに関係値のある経営者を探す。
そのことに気づき、人間関係5の経営者に順番に電話していきました。
そして、経営者に就労継続支援A型事業について語り、自分のビジョンについて語る。
そうして納得してもらったうえで、共感者・協力者を増やして仕事を受注していきました。
例えば、ホームページ制作会社が、新規事業としてセキュリティソフトを開発。
「新たに人を雇うほどではないけど、なにか手伝ってほしい仕事はないですか?」
と聞くと、
「自分も社員もアルバイトも忙しくて、新規事業までなかなか手が回らない。ニーズがあるのはわかっているし、見込み客リストもあるから、専業的に手伝ってくれるならぜひやってほしい」
ということに。
そこで、今野は「セキュリティソフトの営業支援」に加えて、「リスト作成業務」を組み合わせて積算根拠を作成。仕事を組み合わせることで、指定申請の事前相談を突破しました。
既存の見込み客リストだけではすぐに枯渇してしまうので、顕在ニーズに潜在ニーズを組み合わせることで仕事を受注することができました。
指定申請時の仕事内容と実際に行う仕事内容はイコールではない
ほまれの家グループFC本部である株式会社フォープランの取締役・吉田有希さんは、
「指定申請を提出する際の仕事内容と、開業(開所)してから実際にする仕事内容は、必ずしもイコールではない」
といいます。
開業してすぐにメンバーが増えるわけではないので、バランスをみながら仕事を受注するのが経営者・オーナーの役割。
経営者・オーナーにはビジョンや目標、理想像があるので、「こういう事業所にしたい」「メンバーさんにやってほしい仕事がある」と絵を描きがち。それも大切だけど、実際にやってもらう仕事、実際に受注する仕事とはギャップが生じることもある。
当初計画していた仕事と違う仕事をすることの方が実際には多く、集まってくれたメンバーさんそれぞれに合う仕事で、経営者・オーナーとしては収益性も意識しないといけない。最低賃金があるので、生産性にも意識を向ける必要がある。
そんな現実にも、しっかりと目を向けることが経営者・オーナーには欠かせません。
吉田さんも、当初は「古本を回収してクリーニングしてAmazonで販売する予定だった」そうです。ところが実際にやってみると、本が全然売れない。売れても採算が全く合わない。
これじゃマズイと切り替え、営業して仕事を受注していったといいます。
コア業務とノンコア業務を切り分ける視点
すでにパッケージ化・仕組み化された仕事を就労継続支援A型事業所でいっぺんに行うのではなく、ある会社の業務全体のうち、一部の業務でもA型事業所にアウトソーシングしてもらう。
そのためには、業務の棚卸をして業務を分解し、業務フローを設計して必要なマニュアル・ルールを整備する。そうしたプロセスを経て、アウトソーシング・外注化を進めていく。就労継続支援A型事業所の「脱・内職」を実現するためには、このようなコンサルティングの要素が欠かせないのかもしれません。
計画の段階で想定していた仕事内容と、開業後に実際に行う仕事内容は違うかもしれません。しかしそれは、やってみないとわからないことです。
トライ&エラーのくり返し。計画が正しいとは限らないのですから、計画に固執しない柔軟さも大切でしょう。
「だれにでもできる仕事を、優秀な人材にさせていないか」
「自分ではなくてもできる仕事を、経営者自身がしていないか」
「自社にとってのコア業務はなにか、ノンコア業務をアウトソーシングできないか」
そんな問いを、人間関係が5の経営者にしてみると、「仕事の受注」というハードルも乗り越えられるのかもしれません。
と、ハードルを突破できたようなことを書いていますが、4月に開業したばかりのインフィニピー小田急相模原では、お仕事を絶賛募集中です。
・社会貢献に関心がある
・自分では福祉事業をできないけれど、なにかの形で貢献したい
・人手が足りなくて困っている
・業務の仕組み化や外注化に興味がある
という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください!