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「就労Aの事前相談の重要ポイント」【始めよう!ソーシャルワークシェアリング】 vol.62022.10.21#新着情報

本協会では、2021年5月に神奈川県川崎市多摩区にて開業した「ほまれの家登戸店(ほまれの家グループ、運営:Future WINGS株式会社)」、2022年4月に神奈川県相模原市にて開業した「インフィニピー小田急相模原(ほまれの家グループ、運営:インクルクー株式会社)」それぞれのオーナーであり、本協会の理事でもある奈良有樹と今野洋の実体験をもとにした≪就労継続支援A型事業立ち上げ実践会》を開催しています。本稿では、実践会の様子を振り返りながら、就労継続支援A型事業所の開業、およびソーシャルワークシェアリングという新しい社会概念の普及までの道のりを連載でご紹介していきます。第6回のテーマは、「就労Aの事前相談の重要ポイント」です。

第1回「就労Aの仕事受注の誤解」
第2回「就労Aの物件探しのポイント」
第3回「人材採用と資金調達」
第4回「就労Aの仕事獲得の重要ポイント
第5回「就労Aの資金調達の重要ポイント」

 

「事前相談」って何をするのか?

仕事を集め、資金を調達したら、ここまで準備をしてきたことを一度行政に伝えるという作業が発生します。それが「事前相談」。指定権者によって「事前協議」などさまざまな呼び方をされるものですが、段階としては同じものなのでここでは事前相談の名称でお話をさせていただきます。

この事前相談、就労継続支援A型事業所を開業するには、避けて通れない必須のものです。これを行っていないと、申請書そのものも受け取ってもらえないという、極めて重要なステップです。「どんな人が福祉事業をやろうとしているのか?」「その人の素性をすべて知りたい」……指定権者がそうした思いで待っている、といった感じですね。

相手(指定権者)によっては、非常に細かい書類まで用意して望まなければならない、ということもあります。厳しい、厳しくないのハードルも指定権者次第ということはありますが、とにかくここをクリアしなければ、そこから前には決して進めない、というステップです。

 

事前相談への〝事前〟準備

今野が事業所を開業した神奈川県川崎市の場合は、事前相談の前に、書類の一部(必ず必要となる書類)を郵送(あるいはFAX)で送るようにと言われたといいます。ちなみにそれらはA型事業所開業にあたっては一般的な「就労支援事業別事業活動明細書」「就労支援事業原価明細書」「就労支援事業販管費明細書」「収支予算書」の4つ。これらを先方が事前にチェックして事前相談に進めるか(ややこしいですね…)を判断するということです(あくまでも川崎市の場合)。

その他、今野がFC本部の協力のもとに作成し事前に送った資料は、「法人説明シート」「作業工程表」「積算根拠」「業務委託契約書」などでした。前述のように、事前相談は相手が自分の〝すべて〟を知り、福祉事業ができる人物なのかを探られるようなものです。ですから、相談では相手から「ここはどうなっているのですか?」「これは本当に大丈夫なのですか?」等、さまざまなツッコミが入ります。その際に答えに窮したり、計画がなかったりすると当然相手からの信頼は得られません。相手から求められているもの以外の書類は、そのツッコミを回避するための道具というわけですね。

 

「物件」についての資料が肝心

こうしたやりとりを経て、事前相談の実施となります。今野が持参した資料は、前述の「事前提出書類一式」「物件資料」「使用目的と面積入りの図面」でした。

事前相談のゴールと言えるようなものは「物件の確認」。そこで物件関連の資料が必要なのです。

「物件資料」とは、不動産業でいう「マイソク」というもの。図面や住所が書かれた、不動産屋で物件を紹介するときに使われるものです。建物の全体的な規模感、近隣の環境、そして住所が、この資料で相手に伝わります。物件に関する基本情報といえますね。

「使用目的と面積入りの図面」は、オリジナルで作るものです。図面には訓練等の作業室、相談室、多目的スペースの広さが記され、どのように使用されるかが示されています。

こうした資料を用意して、物件に関する先方の疑問をつぶしていくという感じです。

事前相談ではこんなことを聞かれる?

事前相談の時間は、(これも指定権者によってさまざまですが)だいたい1時間といったところです。もちろん物件に関すること以外も聞かれます。

今野の場合、FC本部とともに〝想定問答集〟を作り、万全の体制で事前相談当日を迎えたといいます。事例として以下に紹介しましょう。

「収支予算書の修正箇所は?」

実は事前に用意した収支予算書に不備があったため、その修正について聞かれるだろうということから。

「物件の場所、面積、間取り、定員は?」

これらを説明するために前述の物件資料を用意しました。

「運営法人について(福祉の経験や理念は?)」

これは事前に送った「法人説明シート」に書いてあることでしたが、あらためて自分の口で説明できるように準備しました。

「サービス管理責任者(サビ管)の確保状況は?」

場合によってはサビ管の経歴まで聞かれることがある、ということで、こちらも想定。あらためてサビ管の経歴書を確認しました。

「開業予定時期は?」

「受け入れる障害の種類は?」

「事業の内容は?」

これらは基本的なことですね。

こうしたシミュレーションで、〝ツッコミどころ〟をなくすようにしたのです。

 

事前相談でこちらが確認したいこと

今野の場合、事前相談ではこれらの想定質問はすべて聞かれたといいます。読みはバッチリ当たったわけですね。

その他にも「なぜA型をやろうと思ったのか?」「開業地を選んだ理由」「これまでの福祉の経験」なども聞かれたといいます。

また、事前相談においては、こちらから指定権者に確認しておきたいこともあります。

「その地域での特別なルールはあるか?」

たとえば「相談室のスペースは完全個室にする必要があるのか」といったスペースの使い方等、こちらが気になっている点を逆に確認しておくことも大事です。

「この物件で進めて問題はないか?」

「まったく問題はありません」「完璧です」……そんな言葉はなかなか言われないでしょうが、今野は最後に「この物件で進めていただいて問題ないでしょう」「指定申請の手続きに進んでいただいて大丈夫です」という言葉をもらいました。ここまでいけば事前相談は〝100点満点〟といえるでしょう。

聞かれた質問にしっかりと答えていけば、事前相談は当然スムーズに進みます。

「質問に答えていくなかで感じたのは、この人たち(先方)は決してこちらの福祉への参入を拒みたいわけではないんだな。きちんと事業を理解しているかを確認して、そのうえで応援したいんだな、ということでした」

今野はそう言います。

相手は決して「敵」ではなくて「味方」になってくれる側。そのためにはこちらのことをしっかり知ってもらわなければならない。そしてそのためには、やはり事前相談に臨むまための「準備」が極めて重要、ということですね。



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