「サービス管理責任者の要件」【始めよう!ソーシャルワークシェアリング】 vol.82022.11.24#新着情報
本協会では、2021年5月に神奈川県川崎市多摩区にて開業した「ほまれの家登戸店(ほまれの家グループ、運営:Future WINGS株式会社)」、2022年4月に神奈川県相模原市にて開業した「インフィニピー小田急相模原(ほまれの家グループ、運営:インクルクー株式会社)」それぞれのオーナーであり、本協会の理事でもある奈良有樹と今野洋の実体験をもとにした≪就労継続支援A型事業立ち上げ実践会》を開催しています。本稿では、実践会の様子を振り返りながら、就労継続支援A型事業所の開業、およびソーシャルワークシェアリングという新しい社会概念の普及までの道のりを連載でご紹介していきます。第8回のテーマは、「サービス管理責任者の要件」です。
第1回「就労Aの仕事受注の誤解」
第2回「就労Aの物件探しのポイント」
第3回「人材採用と資金調達」
第4回「就労Aの仕事獲得の重要ポイント」
第5回「就労Aの資金調達の重要ポイント」
第6回「就労Aの事前相談の重要ポイント」
第7回「指定申請の突破術」
協力医療機関との連携・契約とは
「サービス管理責任者の要件」に入る前に、指定申請に必要な「実務経験証明書」のほかにもうひとつ、申請するオーナー側だけでは準備できない書類がありますので解説します。それは、協力医療機関との連携・契約を証明する「協力医療機関に関する協定書」です。
就労継続支援A型事業所も、他の福祉サービスと同じく、地域の病院やクリニック(医療機関)との連携が必要です。事業所近辺の病院やクリニックに打診して、協力医療機関に関する協定書を締結する必要があります。協力医療機関に関する協定書に署名と捺印をいただき、それを指定申請時に使用します。
協力医療機関は、ワムネットで見つけます。ワムネット「障害福祉サービス等情報検索」の「サービス内容」欄には、「協力医療機関」という項目があります。そこには、すでにどこかの事業所とr根系している医療機関が掲載されています。すでにほかの事業所と連携していれば、医療機関側の理解が早くスムーズに進みます。概ね内科が良いとされており、電話でアポを取って訪問するのが基本的な流れです。
病院やクリニックも忙しいので、診療時間外に電話するのが良いでしょう。また、ほまれの家グループ・フランチャイズ本部にはトークスクリプトがありますので、それを活用することでスムーズにアポを取ることができます。
「協力医療機関に関する協定書」を締結する際のポイントは、緊急時の対応です。医療機関側はリスクに対して懸念がありますので、リスクや金銭のやり取りは一切ない旨を伝えると良いでしょう。
訪問時に伝えることは、
・会社や就労継続支援A型事業所の業務内容について
・依頼内容の説明
・協定書の締結
押印済みの協定書を持参することで、その場で締結できることもあります。なお、理事の今野の場合は約2週間で完了したといいます。
サービス管理責任者の要件とは
では次に、「サービス管理責任者の要件」についてです。
実践会では、面接時は「サービス管理責任者として採用、配置できるかどうか」を見極めることがポイントであると解説されました。また実践会のなかで職務経歴書の一部を抜粋した情報が提示され、「この人をサービス管理責任者として配置できるか」を考えるシーンもありました。
採用を有資格者に限定する場合は、「保有する資格」欄を必ず確認します。特に重要なのが、「相談支援従事者初任者研修を修了しているか」を必ずチェックすることです。
サービス管理責任者の資格があるだけではダメで、ここは盲点になりがちです。実際に採用後、指定申請の準備のために書類を提出してもらうときに発覚することもあるので注意してください。また、「相談支援従事者初任者研修」を「介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)」と混同してしまうこともありますから、必ず注意して確認するようにしましょう。修了書のコピーを面接や採用時に提出してもらうことで、事故を回避することができるでしょう。
就労継続支援A型は「常に進化する福祉事業」
当時の実践会では、就労継続支援A型事業所の開業のほかに、グループホームの立ち上げも経験した今野に対し、「グループホームの立ち上げと比べてどうか」という質問もありました。
グループホームの開業の場合、ポイントとなるのは「人材と物件と行政対応」。一方で就労継続支援A型事業所の開業の場合は、その3つに「仕事獲得」が加わります。
今野曰く、「グループホームは、書類をつくっているイメージ」。それは、制度によって決まっているから。「就労継続支援A型事業所は、事業をつくっているイメージ」。グループホームに比べ事業の自由度が高い。それがゆえに、難しいところもあり、やりがいとなることもあるといいます。
就労継続支援A型事業の場合、指定申請のために数字をつくる必要がある(積算根拠)。しかし、実際に開業してからも仕事を獲得していく必要がある。そこが経営者としての腕の見せ所で面白いと今野はいいます。「これでいける!」という突破感が面白く醍醐味でもあるようです。
仕事獲得は、すでに自社グループで別の事業をしていれば早いといいます。全くのゼロからのスタートだと、仕事獲得が経営課題となり得ますから、スタートダッシュを図れるような準備が必要でしょう。
また、「指定申請時と実際に行う仕事は、変わることがよくある」「指定申請時にどんな仕事内容を提出したか覚えていないオーナーもいる」と実践会では実態も語られていました。
開業後は、仕事内容や質、仕事量も変わっていくもの。利用者の方々の対応力が上がり、仕事の質が高まれば、より高いレベル、高単価な仕事を探すことになります。そして利用者の方々のモチベーションが上がり、好循環につながるといいます。
「利用者も成長し、事業所も成長する」
常に進化する福祉事業が就労継続支援A型事業であり、就労継続支援A型事業ならではのやりがいでしょう。
今野は実践会当時、「会計事務所との連携」を進めていました。その会計事務所は、法定雇用率を達成できないという経営課題があり、「罰則(お金)だけで済む話ではない」と代表の方は仰っていたそうです。インクルージョン・ダイバーシティ社会への適応は、経営者としては実現したい課題ではあるものの、「罰則で済ませたい」という現場とのギャップもあるようです。その解決策になるのが就労継続支援A型事業ではないでしょうか。
会計事務所のようなオフィスワークのほかにも、調剤薬局の業務や動画編集など、高単価な仕事を獲得するという選択肢もあります。就労継続支援A型事業の自由度は本当に高く、それがゆえに経営力も求められるでしょう。
開業直前に「サビ管辞退」というピンチ
さらにこの実践会当時は、開業直前に「サビ管が辞退する」という大ピンチにも見舞われた頃でした。これをどう打開するか。こういった予測困難な事態への対応力もときには必要です。
「タイムリミットがあるのでヒリヒリする…」と語る今野は当時、
・インディード
・エンゲージ
・ジモティ
・ハローワーク&リクエスト
・ジョブメドレー&スカウト
・メルマガ
・クラブハウス
・過去の応募者への再アプローチ
・友人知人への紹介依頼
など、あらゆる手段を講じて約2週間猛烈に対応したそうです。
すると、「今の職場が閉鎖しそう」「ちょうど退職しそうな人がいる」など、人づてに得られた情報もあると。どこでどう情報が入って来るかわかりませんから、どんなピンチのときも打つ手は無限です。また、協会員の方々からの応援の声も励みになり、これはコミュニティならではの利点でしょう。